コラム

これからもよろしく

牧師 飯田敏勝

 静岡草深教会の皆々様。長老会で打ち合わせは重ねてきましたが、わたしの思いを自由に広く伝えるのは、ほぼ「初めまして」ですね。まずは少々自己紹介を。

静岡で生まれ育って18年、草深の教会学校で信仰を与えられ高校時代最後の3月末のイースターに洗礼を受けました。大学進学で金沢へ。牧師への献身を与えられ東京神学大学で学んだ上、神戸神愛教会で7年、大曲教会で16年仕えてきました。静岡にも慣れ親しみはありますが、その後の人生で雪国の暮らしにだいぶ馴染んでいます。

静岡にいた頃、サクラに先立って咲くモクレンの花が季節の変わり目を感じられて好きでした。金沢では入学式とちょうど重なってサクラが満開になっていました。秋田ではGW前に春一番の花の見頃を迎えます。ウメ、サクラ、レンギョウなどが同時期に開花し、雪でモノクロに覆われていた世界に、柔らかな色合いが満ちてきます。
その花弁が散った頃、花壇のチューリップや 街路樹の ハナミズキが 葉の緑と共に色とりどりになって、やっと春が本格化。そして日中に暑さを感じる頃にはキリやフジなどの涼し気な色が山間に見受けられるようになります。
雪国の暮らしに大変さが伴うことはありますが、四季の移ろいを感じるのにこれほど適したところはありません。奥羽に赴任した牧師たちから、「キャンディーズの『春一番』の歌詞が実感できた」だとか、「イースターが春の祭りだと本当に分かった」といった声も聞いています。  

 わたしが草深にいた頃、求道者会で永井春子先生の著書が使われていました。その夫である永井修先生には関西時代、特に連合長老会の集まりで色々と薫陶を受けました。わたしが転任するというときに、教えられました。「飯田くん、転任先で『これまでいたところはどうでしたか?』と訊かれたら、『素晴らしいところでした』と言いなさい。そして、『今いるところは、もっと素晴らしいところです』と言いなさい」。  

 その教えに反することになりますが、今回の静岡への転任への思いとして度々わたしはヨハネ21:18を引き合いに出してきました。堀地両先生の辞任の知らせを聞いてから、ずっと「ふさわしい牧者が与えられますように」と半年祈り続けていました。そしたら青天の霹靂です。原則的に母教会への赴任は断るつもりでした。学長とも招聘委員会ともマルコ6:4は確認してきましたし、自戒の念もありました。
しかしそれでも、自他の祈りに対する答えが具体的に挙がってきたとき、それを検討せざるを得ませんでした。決して自分が「ふさわしい」とは思えませんが、それでも神さまからの呼び掛けを今回の招聘の話において聞いてしまいました。結果、自分の思い考えを超えて受諾しました。マッチング自体に配慮すべき点があることに加え、着任直前に急病で事態の急変もあり、異例尽くしの赴任かもしれません。それでも神さまからのお呼びを聞いたという召命の根幹には微塵の揺らぎもありません。草深と新たな関係になりましたが、今後とも、どうぞよろしくお願いします。