コラム
先ず祈備から始めるクリスマス
牧師 飯田啓子
最近、駿府城公園周辺を散歩していると、お堀沿いのミカンが目に入り、久しぶりに“庭は冷蔵庫”感覚を思い出しました。関西で育った私は庭=金庫(土地転売でどれだけ儲かるか)でしたが、前任地では庭=冷蔵庫が当たり前で、散歩するだけで腹強ェ(満腹)でした。新生児よりも大きい白菜や、ピカピカのキャベツ、腕ほどの太さの大根。勿論、渋柿も渋を抜いて干し柿にしてしまいます。ウォッカよりもアルコール度数が高い焼酎に付ければ一発で渋が抜けます。一度、飲みたいと考えていましたが、皆さん「ダメ、きつ過ぎるよ」と仰る(と言うことは試したことがあるんでしょうね)。
またこの季節はあっちこっちの酒蔵で杉玉が掲げられる光景も心躍ります。新酒を絞る段階にも色々あって、初しぼりの初期が“荒走”、その次が“中汲み”“責め”と続き、最後が絞りたて“生酒”。生酒も若々しい味わいですが、荒走の比ではない。数量限定なので杉玉が上がれば虎視眈々と待つ楽しさがあります。
またそれがやがて熟成されていき秋に登場する冷やおろしや秋酒と呼ばれるのは熟成された味を楽しむことが出来る。冬に始まり秋に終わる日本酒ワールド。置けば置くほど、絞るのが早ければ早いほど美味しい。しばし寒さや冷えを忘れることが出来る光景でした。
そしてこれらは全て冬籠りのための保存食になります。厳しい雪の時期になるべく不要不急の外出をしなくても良いように11月末を目途に保存食を蓄えておく。積雪が始まれば、そこは冷蔵庫や冷凍庫になります。雪の中に埋めておくだけで甘み成分が増し、これまた美味しくなる。ただ目印を付けておかなければ何処に埋めたのか見当が着かなくなることだけ注意が必要です。こうやって曇天と大雪で外出が出来なくなる冬に備えていきます。
来週からクリスマスに備えるアドヴェントの季節が始まります。残念ながら第8波のニュースが目立ち始めています。この不安や怖さ、諦めが広がる世界だからこそ、この世界に、その中で生きる人々に、天からの福音が与えられます。様々な心配事を片付けたから福音が届くのではなく、色々な要素を片っ端から片付けるために福音が与えられているのです。祈りで伝えることで、福音で答えられ、頌栄の声を張り上げる。主なる神に見守られている生活の中で備え、御子キリストを待ち望む日々を楽しみましょう。