コラム

ババヘラ天国

牧師 飯田敏勝

 秋田のひそかな名物にババヘラアイスがあります。字面のごとく比較的高齢の女性がヘラですくって提供する黄色とピンクの(半分シャーベット状の)アイスなのです。 
 気候が良くなれば観光地には必ず、時には単なる幹線道路の道端にも現れます。桜の時期の角館や、GWの動物園、大曲の花火などでは何軒も連なって出店してきます。幼稚園や学校の行事には必ず、下手すれば教会バザーにまで(無関係なのに情報を聞きつけ)現れたりもします。
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 大曲教会員の割と若い方と雑談していて、ババヘラが話題になったとき「あたしの体の半分はババヘラでできているの」と言いました。主食のあきたこまちやきりたんぽならまだしも、氷菓でそのように表現するのはおかしな気もしました。
 ですが、数年秋田で暮らしてみればその真意を汲み取ることができます。
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 観光客なら一度食べて、噂に聞いた「これがそうか」となるだけです。しかし秋田で育った身には、生まれてこのかた何度もババヘラを口にする機会がありました。それが楽しい記憶と結びついているのです。
運動会で頑張ったから、幼稚園や学校を出たすぐのところにある(秋田は鷹揚なんで時には敷地内に出店していたりもします)ババヘラをごほうびで買ってもらいます。縁日や季節のお祭り、休日のお出かけも家族や友人との思い出になります。
 基本はババヘラなのですが、機材を運ぶ運転手が最後に売り子になってジジヘラになったりします。びゃっこな目撃例は衝撃的です。高校の学祭などではアネヘラも登場します(これは説明不要ですよね?)。
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 ババヘラは(ぜひ画像検索を)ヘラですくったアイスが花のように飾り付けられます。
 天国はこの世と無関係ではありません。何もない清らかな世界に身一つで転生する(下手したら雲の中にいるようなイメージを描いてないですか?)のではありません。確かに罪や死と関わる要素は滅ぼされますが、人が生きる環境もその人のために永遠の世界に移されます。隣人はもとより、仲のよかったペットや、大好きな趣味の物事、思い出の旅行の光景なども天国で再度味わうことがきっとできます。
 それは神さまがわたしたちの人生から、ひとヘラひとヘラ丁寧にすくい取って、もう一度花咲かせてくれるようなものです。
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 教会員を牧することは、聖書をただ学術的に教えるのではなく、その人に届くよう配慮することです。これからは静岡にふさわしい福音が語れるよう、どうぞお祈りください。