コラム

聖書の構成と流れ

飯田敏勝

 教団信仰告白の冒頭で「旧新約聖書は……」と述べていますが、聖書は〈旧約〉と〈新約〉とによって構成されています。そしてまた、「創世記」から「ヨハネの黙示録」までの66巻で構成されています。
 聖書は、これも教団信仰告白の言葉でいえば「神につき、救ひにつきて、全き知識を我らに与ふる神の言にして、信仰と生活との誤りなき規範」という〈正典〉です。
 その性質として、範囲が定まっていることが重要なのです(参照、黙示録22:18~19)。
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 旧約の最初の五つの書物は〈モーセ五書〉、もしくは〈律法〉と呼ばれます。新約の福音書と同じように、信仰の根幹を成すものです。
ただし、判例集としての法がでてくると読みにくく感じるでしょうが、大小様々な範囲で〈物語〉と交互に出てきます。大きな神さまの計画の流れの中で、実際に問題になったことを解決していく法が出てくるのです。
 創世記の〈系図〉も煩わしく感じるかもしれませんが、神の民の軌跡が明瞭な部分です。これも〈物語〉と相互補完する形で大きな歴史を語ります。
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 上記の歴史は神話的要素も多々含み、民族的アイデンティティを形成しますが、もう少し人間的要素の強い歴史を、「ヨシュア記」から「エステル記」の〈歴史書〉が伝えます。
 同じ時代を語る書物もありますが、歴史観の違いがあったりします。
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 「ヨブ記」から「雅歌」は〈聖文学〉です。聖書は神の言葉ですが、一方通行ではありません。特にこの部分は、神さまと向かい合う人間の言葉――祈りや讃美が中心ですが、時には嘆きや反抗――の模範を教えてくれます。
*    *    * 「イザヤ書」以下は〈預言書〉です。単なる予言ではなく、神の言葉を預かり、その時代や状況に相応しく語り直す、説教的要素が強いものです。
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 新約は、イエスさまの言動を伝える〈福音書〉と、ルカによる福音書の続編として弟子たちによる宣教の歴史の〈使徒言行録〉があります。〈福音書〉が複数あることによって、多角的な視点が得られます。
 次の〈手紙〉はパウロの教会宛、パウロの個人宛、公同書簡という並びです。最後に〈黙示録〉が終末について教え、救いの完成を待望することにわたしたちの信仰を導きます。
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 聖書はその全体が神の言葉です。礼拝で説き明かしを聞くと共に、一人一人が通読することが信仰の土台になります。わたしなりに概説すれば上記のようになりますが、文書の性質や、背景となる事情を踏まえておくと、ぐっと読みやすくなると思いますよ。