コラム
答えの出ない問題
飯田敏勝
多くの方々を不安にさせているニュースとして、ガザ地区のことがありましょう。争いが絶えない地域ですが、にわかに大きな衝突となり、市民の犠牲が映像も顕わに報道されています。ウクライナに続いて看過できない戦争として、否が応でも思いを馳せることになります。
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パレスチナ地域は聖書の主たる背景です。これまでも含め今回の衝突の発端は、イスラエル人が「約束の地」に帰ってきたことです。
アブラハムがいくら財産を持つ有力者だったとしても一家族です。エジプトで子孫が増え、民族となって再入植してくれば先住民とは衝突します。ヨシュア記あたりから始まる戦いが今に続くわけです。
イスラエル側にしてみれば、神さまから与えられた土地を大事にすることは当然です。聖書に親しむわたしたちは、この事情にある程度通じていましょう。
またパレスチナ人にしてみれば自分たちが住んでいた地域を、何百年も経ってから勝手に「自分たちの土地」と主張されても、当然の権利として反発します。この世の常識として、パレスチナ側の訴えも理解できます。
この対立は長年継続し、大小の衝突は歴史の中で継続します。ただ、第二次世界大戦後のイスラエル建国が問題をさらに複雑にします。今回の紛争でも欧米各国がイスラエル側になびく所以ですね。
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旧約の原語 ヘブライ語を勉強すると、動詞の時制が少ないことが分かります。動作が点的か線的かの完了形と未完了形しかなく、英語のような過去形・現在形・未来形のような時間感覚が乏しいのです。
それは歴史を語るときに、決して過去の出来事と片付けるのでなく、語られたら目の前の出来事のように受け止める 言語的素質 があるように思えるのですが、御参考迄。
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英和の 全校修養会 の講師の 塩谷直也先生(青山学院大学)が、講演の最後に話されました。
通っていた高校で問題が解けた人から帰ってもいいというシステムがあった。ある日の問題は、誰も解けない。「答えがないんじゃないか」という憶測も出始めたが、一人二人と正解を出す人が現れた。
そのとき塩谷先生は分かったと言うのです。「答えが出ない」ことは、決して「答えがない」こととイコールではない、と。
今の自分にはどうしても分からないことでも、答えがないわけでないのです。今の人類が全身全霊をかけても答えが出ないのがパレスチナ問題ですが、それだって決して答えがないわけでないのです。
神さまを信じ、その神さまの答えを尋ね求めることのできる信仰者には、暗い世を照らす光(かすかな光かもれませんが)の役目があります。