コラム
讃美歌解説『世界に告げよ』
飯田敏勝
霊歌です(「黒人霊歌」の原語表現にNegroが含まれるので、名称が変わってきています)。奴隷として連れてこられたアフリカの人々の音楽が、アメリカでキリスト教と融合して生まれたものです。霊歌/Spiritualは、エフェソ5:19やコロサイ3:16が元になっています。
霊歌発祥の経緯からして、ポピュラーソング的な親しみやすさがありましょう。Ⅱ172の“GO TELL IT ON THE MOUNTAIN”も、サイモン&ガーファンクルがデビューアルバムの中で歌っています。
元々の英語歌詞では、イエスさまが生まれたことを「山の上で、丘を越えて、すべての場所で告げよ」というクリスマスソングです。Ⅱ編の訳詞ではクリスマスの要素が陰に隠れ、いつでも歌える曲になっていますね。
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静岡草深教会は2022年度および23年度「新しい歌を主に向かって歌え」を標語とし、わたしもその実現のために尽力してきました。教会として『讃美歌第二編』や『讃美歌21』も用いているというので、標語の精神を実現できるよう、積極的に用いてきました。が、どうも草深にとっては革新的すぎるチョイスをしているようです(いや、もっと革新的な歌はたくさんあり、それらは避けていたんですけれどね)。
その自己認識が最近生まれたので、もう少し新しさのハードルを下げねばと思い、選ぶ一曲です。
ただし、草深が長老教会を目指すというなら、Ⅱ109や21-113のようなジュネーヴ詩編歌は歌っていかねばなりませんよ。
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『讃美歌(1954年版)』(いわゆるⅠ編)はわたしも大好きで、現代
にいたるまで果たしてきた役割も非常に大きいものです。ただ「歌は世につれ世は歌につれ」は、讃美歌についても当てはまります。Ⅰ編の曲調や歌詞表現だけでは、もはや現代、積極的な伝道は難しいと思います。
次週、修養会とリンクした主日礼拝で説教後の讃美歌として、Ⅱ172「世界に告げよ」を歌いますが、福音を聞いたわたしたちが歩み出すとき、その心を、実際の生活を、この讃美歌はリードしてくれるはずです。讃美歌練習で馴染み、Ⅰ編の曲と同じように信頼を寄せることのできる讃美歌にしておきましょう。
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霊歌の一つの特長にアレンジのしやすさがあろうかと思います。「アメイジング・グレイス」のカバーを聞いてもそれは実感できるでしょう。
YouTubeで“GO TELL IT ON THE MOUNTAIN”を検索すれば、色々なアレンジを視聴できます。そんな楽しみもできる讃美歌の一つです。