コラム

読書案内『まんが音楽の歴史1』

飯田敏勝

 詩編150編には、金管楽器・木管楽器・弦楽器・打楽器がそろって出てきます。神さまを讃美するわたしたちの礼拝には、音楽も欠かせません。
 人類誕生・古代文明期からの上記各種別の楽器の機能や、古代ギリシア文化で哲学と結び付いた音楽も、聖書の背景と無関係でありません。そんな知識をまんがで踏まえられる、ひのまどか監修『まんが音楽の歴史1古代・中世~ルネサンス』(2024年、Gakken)が出ました。
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 【音楽の歴史】と【世界の歴史】がつながって見える!……「楽器が時代と共にどのように生まれ、どう進化したのか?」 「社会が音楽の創造にどのような影響を与えてきたのか?」時代の流れとともに、古代から近現代までを全3巻で解説します。第1巻では、人類誕生からルネサンス期 (~1600年代)までの政治・宗教と音楽の関係をたどります。……難しい内容もまんがだからサクサク読める!音楽の歴史を楽しみましょう。
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  というような 出版社の紹介文ですが、一読して素直に賛同します。〈歴史〉に主眼を置いているのがいいですね。
 最近子ども向け学習図鑑も非常に優れた内容になっていますが、図鑑だと情報は断片的になりがちです。
 本書はきちんと、歴史としての因果――発展の前後関係――まで伝わる内容になっています。音楽という文化の成長が、政治や経済や宗教の歴史といかに関わり合っているのか、コンパクトに集約されています。
 特に〈まんが〉の機能を活かせているのは、さすが学研です。
 グレゴリオ聖歌と教皇グレゴリウスⅠ世との関連は、まんが的文法でさらっとまとめます。ルネサンス期のパトロン制度も、まんがであるがゆえ一つの事例紹介の上で簡潔に説明を済ませています。破門直後のルターの心境表現は、キリスト教界内部の者ならこんな風には決して描くことができず、吹き出してしまいました。
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 最近、個別の楽器の歴史を含めたうんちくを傾ける「世界の楽器が語れるBAR」というYouTubeチャンネルを、よく観ています。タンバリンの回でミリアム(出エジプト15:20)、トランペットの回でアロン(民数10:8)も紹介されます。
 聖書に出てくる○○を調べる正攻法だと、どうしても信仰的な物の見方になりがちです。逆に、○○を調べる上で聖書も参照するという意見を聞くと、視野が広がる気がします。
 今回紹介した本を読むと、聞きかじっていたキリスト教音楽に関する知識の、周辺にあるものや、時空間的背景まで見えてくるでしょう。