コラム

「読書案内『さいしょのクリスマス』①」

飯田敏勝

 (文)N・T・ライト、(絵)ヘレナ・ぺレス・ガルシア『さいしょのクリスマス かみさまのやくそく』(日本聖書協会、2025年)が刊行されました。

 ライトがどのようにクリスマス物語を紡ぎ出すのか、興味津々で待っていた本です。

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 正直、文字を読んでもあまり目新しさは感じられないかもしれません。

 特徴的なこととしては巻末に、クリスマス物語においてどのような預言が実現したか、旧約個所が列挙されています。同一著者の『わたしの聖書物語』で物語本文の下方に挙げられる、「この物語と関係があるよ/こちらも読んでみよう!」と同様の役回りです。聖書内での連関を明示してくれています。

 ただ、本文に目新しさを感じないのは、聖書の記述に忠実だからです。変な脚色がなく、バランスよくマタイとルカのクリスマス物語を語っていきます。けれども個人的関心に傾かず聖書のままに再話するのは、難しいものですよ(説教もそうです)。

 裏表紙にも語られる「よいしらせ」や「ほんとうのおうさま」も、ライトの神学における鍵語です。神学は本当の絶対者を相手にしているため、自己相対化をもたらします。目立たないけれど、きちんと神学に立った成果が文章には現れています。

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 ただ絵本ですから、文章だけでは済まされない側面があります。

 必死に目を凝らさないと読み解けない、イラストレーション(=説明)が本書には満載です。『わたしの聖書物語』を紹介したときには絵によるイラストにほとんど触れられなかったんで、今回は二週にまたがって語りますよ。

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 割に多くの見開きに、動物と植物とが描かれています。

 人は被造世界の管理人の務めを与えられ(創世2:15)、その本来の務めを取り戻すのはイエスさまによる(参照、ヨハネ20:15d)のです。この御方の誕生によって、かの務めが取り戻され始めたしるしが、世話すべき被造物の動植物が描かれる所以(ゆえん)でしょう。

 ヨセフが猫を飼っていたかどうかは疑問です。聖書に猫は出てきません(笑)。ただ、犬でないことは新約学者ライトの監修がきっと入っています。聖書における犬の意味は、豚と同じような汚れたものの代表ですから。

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 そんな風に最初の方の数ページでは明らかに脇役の動物ですが、ろばが人を乗せながらやや大きく描かれ、読者の方を向いています。次の頁ではそれより大きな画面上の羊が両目を読者に向けています。

 これらは間違いなく、イエスさまの後々のお働きを予告しています。