コラム
「栞」

飯田敏勝
しおりが好きです。
聖書と讃美歌を生業の道具にしているからでしょう。とはいえ、毎週礼拝に出る方にとっては、結構必需品だと思います。
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付箋紙の代表格「ポスト・イット」の開発秘話です。3М社の科学者スペンサー・シルバーは、紙を貼ることはできるがはがすこともできる弱い力の接着剤を発明。しかし、その用途が見つけられませんでした。
同じ3М社のアーサー・フライは、教会の聖歌隊で歌っていました。楽譜のページに挟んでいた紙が、よく落ちてしまいます。そこから、上記の接着剤を活用できると考えついたそうです。
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目下わたしが愛用しているのは、マグネット式のしおりです。落ちない、ズレないというのは、利便性が非常に高いです。
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猪又義孝『世界のしおり・ブックマーク意外史』(デコ、2017年)というマニアックな本が手元にあります。本文の最初の図として、AVACОの石板を持つモーセのしおりが載っています。わたしが確かに子どもの頃、持っていたものです。書籍を衝動買いしてしまいました。
しかしこの本をちゃんと読むと、しおりをはじめとする読書の周辺領域の品々は、やはり聖書との関連で発展してきたことが分かります。聖書の内容の重要性は神学で教えられますし、写経の仕方や印刷術の発展と関連した書籍自体の意味合いについては 真面目な歴史が 記録に残しています。しかし、聖書をいかに保管していたかなどはあまり見聞きすることもなかったので、知的好奇心が大いに満たされた一冊であります。
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冒頭の話に戻って、礼拝に出るときには皆さんも、その日の聖書と讃美歌にしおりを挟んでおくことはお薦めします。もちろん絶対せねばならないわけではないですが、特に聖書を複数の個所開くことは時間もかかります。予め目を通しておくことも理解の助けになります。
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漢字「栞」の感じって、中々オツな気がします。成り立ちとしては、山で木を削って(「幵」が削るの意味)道に迷わぬようしたことからだそうです。「しおり」自体に、道しるべの意味があります(「旅のしおり」など)。信仰のしおりを大切にしてください。

